いったい現実を把握している者はいるだろうか?

音楽

シカゴの初期のシングルに「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」という邦題が長ったらしい名曲がある。
1970年当時、シングルとしては、大ヒットした名曲、「長い夜(25 or 6 to 4)」の後にリリースされたから、その後に作られた曲なのかなと思っていたのだが、1969年、あのデビュー盤にも関わらず、当時としては異例の2枚組でリリースされた「シカゴの軌跡(The Chicago Transit Authority 英題は元々シカゴの最初のグループ名)」に収録されているので、わざわざ過去のデビュー盤からシングルカットされたわけだ。なのでやはりそれなりの思い入れのある曲なんだろうと思ったものだ。

実際の曲のこのタイトルは ”Does Anybody Really Know What Time It Is?”で、直訳すると「誰か本当に今何時だと知っている人はいますか?」だ。歌詞を見ても別に「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」的な内容は全く出てこなく、あくまでも日本側による意訳だ。

初期の頃のシカゴはキーボードのロバートラムの作品が多く、この曲も彼の作品だ。当時シカゴの曲は政治色が強く、だからこの邦題となったのであろう。
この曲はデビュー盤に収録されていると書いたが、実はグループとして一番最初に収録された曲であり、ロバートラムが若い時、今何時か訪ねた時、返ってきた答えがこのタイトル”Does Anybody Really Know What Time It Is?”でその返答にインスピレーションを受け、アイデアを膨らませたという話だ。つまり、「今何時ですか?」と尋ねたら、「今本当に何時だかわかっているやつなんかいるのかい?」というファンキーな答えが返ってきたわけだ。
しかしこの答えってなかなか哲学的で確かにいろんな解釈ができる。今と違って当時腕時計とかで何分何秒まで正確にわかりっこなかったし、その時計が進んでたり遅れてたりしたかもしれないし、ましてや壊れてるかもしれない。また正確な時間なんて気にもしない人もいるだろうし、気にする必要もないのかもしれない。いろんな現実もわかった気になってるけれども、違うかもしれないし、本当のことを知る必要もないかもしれない。でもそれでも知りたいかもしれない。邦題では、「いったい現実を把握している者はいるだろうか? 」になってしまっているのだが、疑問の投げかけとしては、あながち間違ってもいないのだろう。

もう52年も前の曲になってしまってるが、今もその本質は何も変わっていない。その問答も。そして曲も色褪せていない。

 

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