昔から60年代後半〜70年代にかけての洋楽が好きなのだが、その年代で特に好きなロックグループのひとつにバッド・フィンガーバッド・フィンガーがいる。「マジック・クリスチャンのテーマ 」、「明日の風」、 「嵐の恋」、「デイ・アフター・デイ」・・・日本で同じみの数々の名曲。そしてニルソンやマライア・キャリーのカバーで有名な古典的名曲、「ウィズアウト・ユー」。
まだCDではなくレコードだった頃、何曲かのヒットしたシングル・レコードは買ったのであるが、アルバムはまだ買ったことがなかった。
今ではそのアルバムもCD化され、デジタル・リマスターでも登場している。
その彼らの名盤中の名盤と言われているアルバムの中に「ストレートアップ」がある。
最初、ビートルズのジョージ・ハリスンがプロデュースしたが途中で断念。最終的には、トッド・ラングレンがプロデュースを引き継ぎ完成させたアルバムだ。なので、ジョージ・ハリスンがプロデュースした中のヒット曲、「デイ・アフター・デイ」のとても印象的なスライド・ギターは、ジョージ・ハリスンなわけで、それとは別に、本来はシングル候補であった「ネイム・オブ・ザ・ゲーム」や「ブレイキング・バッド」のエンディングに使われたために、まさかのリバイバルヒットとなった「ベイビー・ブルー」くらいは聴いたことがあったが、CD化されるまでは、そのアルバム全体は聴いたことがなかった。
そして実際に彼らのCD化されたアルバムを聴いていると、今まで聴いたことがない曲で、最初聴いた時は、ちょっと地味に思えた曲が、何度か聴いていくうちに心に残り、そして最後には打ちのめされたという曲が何曲かある。アルバム「ストレートアップ」第1曲目の、「Take It All(テイク・イット・オール)」だ。
バッド・フィンガーが、ジョージ・ハリスン主催の「バングラデッシュコンサート」に参加した際、ピート・ハムとジョーイ・モーランドでに確執があって、その件について、ピートがジョーイに贈ったとされる曲と言われている。
歌詞は、「本当に大切なのは、脚光をあびることではなく、ましてやそのためにせっかくのステージをダメにすることじゃない。互いに強い絆がある。そして歌が君をハイにしてくれる。僕はそんな脚光を浴びてきたけれども、そんな脚光など僕にはもう必要ない。全部持っていてくれ。」ちょっと意訳だが、大雑把に言うとこういう内容だと思う。1番(the sun has shone on me)、2番(the sun could shine on you)、3番(the sun will shine on you)とも言える歌詞の変化がまた、なんとも言えない。
ただそれだけでなく、この曲が、ピート・ハムのその後の短い悲劇の人生を表しているようで悲しい。ピート・ハムこそ、このグループの要で数々の名曲を書き上げた人だ、
“Take It All (全部持っていってくれ)”。結局、彼らのマネージメントを担当していた、ある「詐欺師」とも言われる男が金だけではなく、彼の命すべてを持って行くような結末になったからだ。ピート・ハムはそれらの訴訟のおかげで、極貧の財政状況にお陥り1975年に首吊り自殺。
また、この「テイク・イット・オール」を捧げたと言われているメンバーのジョーイ・モーランドは、初期からのメンバーでピート・ハムと名曲、「ウィズアウト・ユー」を共作したトム・エヴァンズと、その「ウィズアウト・ユー」の件で訴訟になり、1983年にトム・エヴァンズはその訴訟などで疲れ果てて首吊り自殺。
初期からの中心メンバーで非凡な才能を持っていた2人が、同じように裁判やお金の件などで苦しみ、最後は首吊り自殺したわけだ。「テイク・イット・オール」が入っている「ストレートアップ」のアルバムの中には、「マネー」という曲もあるが、その中の歌詞に”Money make you feel unhappy(お金は君を不幸にするよ)”とあるが、ある意味、まさにその通りだった。
“Take It All (全部持っていってくれ)”。別にこういう音楽の世界だけではなく、どんな業界でもそうだが、人生において光輝く時がある。いわゆる乗りに乗っている時期だ。本人は、「名声」や「出世」のためではなく、本当にその会社や業界、またはそれ以上に大きなものをよくしようと一生懸命奮闘しているのかもしれない。
ただ他人からは、そのことで、よく思われなかったり、嫉妬をさそったり、汚い手で潰そうとされたり、すべてを奪おうとされたりする。いろいろな人達が、そういうことでひどい目にあっているが、自分自身もある人達から、人生をめちゃくちゃにされた一人だ。その時最後は本当に、ただ「全部くれてやる!」と叫びたかった。
なのでこの曲を聴きながら、時々、”take it all, I don’t need it at all” と叫ぶのであった。
彼らの初期の名曲、「明日の風」より
”Carry on till tomorrow there’s no reason to look back
Carry on Carry on Carry on ”
明日まで続けよう。振り返る理由はない
続けよう、続けよう、続けよう・・・・



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