赤い線香の話

海外

お線香の話、と言っても日本の線香の話ではない。中国系のお寺のお線香の話だ。
アジアの各地の中国系のお寺の線香は日本の一般的なものに比べるとかなり長いものが多い。一般家庭用で使用される線香ですら日本に比べると長い物が多いのであるが、最近は住宅の事情も関係しているのであろうか、昔と比べて日本のような短めの線香や無臭の線香も増えている。そういう線香を売る店で、たまに真っ赤な線香を売っていたりすることがある。

昔、シンガポールに住んでいた頃の話であるが、その時住んでいたある場所の近くに古い小さな観音寺があった。ただその場所が結構わかりにくい所にあったことと、そこまで行く交通が大変不便な場所にあったので、訪れる人も少ない様子であった。
1日に数回ほど、そのお寺を管理するおばあちゃんが来てそのお寺の掃除をしていた様であった。その時近所に住んでいたので、これも何かの縁であろうと、たまにお参りに訪れていた。

ある日、線香を売っている店で赤い線香がやたら大量に売られていた。その時は、「赤い線香もあるんだ」という軽い気持ちで、また逆に普通の線香が少量しか売っていなかったので、その赤い線香を購入し、そのお寺でお参りをした。

しかしその時、たまたまそこのお寺を管理するおばあちゃんがいつものように掃除をしていた。そして会釈をし、その赤い線香に火をつけてお参りしようとしたら、そのいつも温厚なおばあちゃんが突然怒り出す。
一体何故だろうと、訳がわからなかったであるが、とにかくその線香を使うのをやめた。後でよくよく理由を聞いてみると、赤い線香を観音様にあげるという行為は大変失礼だというのだ。
というのは、赤い線香は、そういう仏様にあげるのではなく、一般の霊に線香をあげるときに使う線香だというのだ。
その時は確かに旧暦の7月でいわゆる「鬼月」。日本で言うところのお盆の月だ。多分、その季節、街中で一般の浮遊霊等の供養も含め、ドラム缶などで、金やら衣服などにみたてた紙などを燃やしたりするのであるが、その時に使われる線香だったのであろう。だからその時に限ってそれ用で大量に売られていたのだろう。

たまに香港でも、小さなお寺とかで、誰かが寄進したのか赤い線香が置いてあったりする。でも、それを使って、仏様にお祈りしてはいけないのわけだ。注意しよう。

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